私が20代だった頃、G-SHOCKはブームだった。私も例に漏れず着けていたが、流行が過ぎ、年齢的に合わないと感じて手放した。以来、20年近くG-SHOCKとは無縁だった。

そんな私が、いま再びG-SHOCKを腕に巻いている。きっかけのひとつは、Apple Watchをやめたことにある。

旅に出る機会が増え、毎日充電が必要なApple Watchが煩わしくなった。そこで、バッテリーが5日以上もつFitbitに切り替えた。軽くて小さく、すぐに気に入ったが、時計としてはどこか心許ない。

Fitbitは右手に回し、左手には時計を着けることにした。せっかくなら、きちんと選びたい。そう思って、久々に腕時計を探しはじめた。

普段の装いは、テーラーメイドのジャケットにワイシャツというトラッドなスタイルが多い。ならば、アンティークな雰囲気の革ベルト時計が定石なのだろう。だが、どうにも気が乗らなかった。

革ベルトは、汗の匂いが染みつくのが気になる。銀色の金属ベルトも、光りすぎて服から浮いて見える気がして、好きになれない。

加えて、時計メーカーが展開する紳士向けモデルは総じて高価で、しかも似たようなデザインが多い。私が時計に求めるのは、せいぜい時間の確認程度だ。ヘルスケア機能はFitbitに任せればいい。

それなのに、数十万円も出す気にはなれなかった。だったら、ジャケットや靴に金をかけたい。

清潔に保てて、あまり目立たず、それでいて凡庸ではないデザイン――そんな時計を探していたとき、ふと思い出したのがG-SHOCKだった。

少し前、G-SHOCKが日本でのブーム後も海外で売れ続けているという記事を読んだ。ストリートにのみならず、さまざまなファッションシーンで受け入れられているという。ほとんど忘れかけていた私には、意外な話だった。

認識を改めて、CASIOの公式サイトを開いた。そこには、想像以上に多彩なG-SHOCKが並んでいた。

正確に言えば、ベゼルや文字盤の形状はある程度限られている。ただ、色と素材の組み合わせによって、驚くほど印象が変わる。たしかに、これならさまざまなシーンで使われるのも頷けた。

気がつけば、毎日のようにサイトを覗いていた。CASIOは毎月のように新作を出していた。そのうちのひとつに惹かれ、購入に至った。

G-SHOCKを着けるのは20年ぶり。スマートウォッチではない「純粋な時計」を腕に巻くのも、10年ぶりのことだった。

実感した利点は、充電が不要なこと。電池の寿命は機種によるが、だいたい2〜3年。旅先でバッテリー切れを心配せずに済む。

今さらながら、腕時計とは本来こういうものだった。毎日充電を習慣にさせたAppleは、良くも悪くもやはりすごい会社だと思う。

G-SHOCKは、デザイン以外でも私の条件に合っていた。ウレタンバンドは防水性が高く、丸洗いできて衛生的だ。かつてはゴツい印象を持っていたが、小ぶりなモデルもある。黒を選べば、トラッドな装いにもそれほど違和感はない。

もちろん、トラッドスタイルにはアンティークデザインの時計のほうが似合うのは承知している。G-SHOCKが最適解とは言えない。

しかしながら、私は時間をこまめに確認する性分だ。目をやったとき、自分が気に入ったベゼルや文字盤がそこにある――その小さな満足は、日常にも旅にも、わずかながら良い影響を与えてくれる。

すっかりG-SHOCKが気に入り、服や季節にあわせて着け替えたくなった。気づけば、この一年で五つも買っていた。

ピンクのシャツと合わせて、よく着けるG-SHOCK。文字盤のグラデーションが美しい。
ピンクのシャツと合わせて、よく着けるG-SHOCK。文字盤のグラデーションが美しい。
海をイメージさせる夏用G-SHOCK。夏は小さい方がよいと思い、レディースサイズを選んだ。
海をイメージさせる夏用G-SHOCK。夏は小さい方がよいと思い、レディースサイズを選んだ。