神戸に初めて訪れたのは、これを書いているちょうど一年前。長らく私には縁のない街だったが、今では三ヶ月に一度訪れるようになった。
きっかけは、ジャケットをすべてオーダーメイドで揃えたくなり、テーラーを探していたことにある。神戸はお洒落な街として知られており、良いテーラーがあると期待した。実際、その期待どおり、信頼できる店を見つけることができた。それ以来、何度も通い、ジャケットやトラウザーズをオーダーしている。
神戸では、いつも市内のホテルに泊まる。繁華街の近くに選択肢が多く、宿泊費も手頃だ。一泊一万円未満の条件でも、清潔で、ゆとりのある部屋を見つけることができる。
三宮、元町、旧居留地、北野坂——それぞれ異なる表情を持ち、ただ歩くだけでも楽しい。つい、カメラのシャッターを切りたくなる。飲食店やバーも豊富で、個性的な店も多い。旅先では、飲食店を巡るのも楽しみのひとつだ。そんな私には、うってつけの街である。
それにもかかわらず、なぜ長いあいだ訪れずにいたのか、自分でも不思議に思う。



神戸は魅力ある都市だが、大阪のような過度な混雑はない。駅周辺や中華街こそ賑わっているものの、少し足を伸ばせば人通りも落ち着く。そんな場所にこそ、静かで良質な店が潜んでいる。
今や大阪や京都は、観光客であふれている。それと比べると、神戸は観光地としての存在感は控えめだ。かつて外国の要人が暮らした洋風建築も、欧米人にとってはあまり物珍しさを感じないかもしれない。
関西には、大阪のエネルギッシュな都市風景や、京都・奈良の古都らしい風情がある。それに比べると、神戸には「日本らしさ」がやや希薄に映る。だが、それこそが過度な混雑を避けられている理由なのだろう。

若い頃は賑やかな街が好きだったが、年を重ねるうちに、静かに過ごせる場所を好むようになった。今では地方や田舎を旅することも多いが、ときには都会が恋しくなる。ただし、混雑は疲れる。神戸は、私にとって「ちょうどいい都会」である。
新神戸駅からは新幹線に乗ることができ、西日本の旅の拠点としても便利だ。鹿児島へも、そのまま新幹線で行ける。ちょうど今、鹿児島旅行の計画を立てているが、神戸で一泊し、そこから向かうつもりでいる。そのときは、神戸のテーラーで仕立てたジャケットを着ていくつもりだ。