私は今、毎日コーヒーを飲んでいる。毎回、豆を挽いてドリップする。だが、もともとコーヒーは苦手だった。
味そのものは嫌いではなかったが、飲んだ後に一日中続く胃のムカつきが耐えがたかった。気まぐれで口にしては、決まって後悔していた。胃が弱い体質のせいだと思っていた。
ある時、コーヒー焼酎というものを飲んだ。コーヒー豆を焼酎に漬けたもので、香りはしっかりあるが、飲んだ後の不快感はまったくなく、コーヒーの味を楽しむことができた。アルコールに漬けることで、ある程度カフェインが抜けるという話だった。
この経験から、胃の不調の原因はカフェインにあるのではないかと考えるようになった。
ある日、友人と時間を潰すために入った大手のコーヒーチェーンで、その話をした。すると友人が、「じゃあ、デカフェにしてみたら?」と言った。私はそのとき、初めてデカフェというものの存在を知った。
試しに飲んでみると、まったく胃のムカつきがなかった。それ以来、カフェインレスの粉末コーヒーを買い、毎日飲むようになった。やはり、自分はコーヒーの味が好きなのだと実感した。
それから一年ほど経った頃、ふとカフェイン入りのコーヒーを試してみた。不思議なことに、もう胃の不快感はなかった。いつの間にか、耐性のようなものができていたらしい。
その後、粉末のカフェインレスコーヒーはやめ、専門店で豆のまま購入し、手で挽いてドリップするようになった。気がつけば、立派なコーヒー習慣が出来上がっていた。

今では、1日に3〜4杯、100mlずつ淹れて飲む。これくらいが、自分にとっての適量らしい。鮮度の良い豆を挽き、淹れたてを飲むことも、胃に優しい理由のひとつかもしれない。ちなみに、缶コーヒーは一切飲まない。
あらためて考えると、カフェインだけが原因だったとは言い切れない。紅茶もカフェインを含むが、昔からコーヒーのような不快感はなかった。飲みすぎない限りは。
コーヒーに含まれる何らかの成分とカフェインが組み合わさって、あの不快感を引き起こしていたのかもしれない。あるいは、デカフェ生活を続けたことで、体質に何らかの変化があったのか。不思議なものだ。
いずれにせよ、今の私にとってコーヒーは欠かせない日常の一部になった。仕事の合間に豆をゴリゴリと挽く時間は、ちょっとした息抜きでもある。豆は、お気に入りの店から毎月定期便で取り寄せている。
旅先でも、こだわりのあるコーヒー店を訪ねるのが楽しみの一つだ。丁寧に淹れてもらった一杯には、素人の自分では出せない味がある。
今ではもう、自分は立派なコーヒー好きの一人だと思っている。
