日常ではG-SHOCKを愛用している。タフで滅多に壊れないというのは、旅行でも心強い。しかし、私はクラシックスタイルの装いを好むから、それに合う腕時計も欲しいと以前から思っていた。
そろそろ一本決めようと探し始めたのだが、気づけば腕時計沼にハマっていた。これといったものがなかなか見つからず、仕事と睡眠時間が削られる始末である。
私はメイド・イン・ジャパンにこだわっている。だから、国産メーカーに限定し、さらに旅行でも使いたいという前提から、精度を重視して機械式は候補から外した。
国産時計といえば、セイコー、シチズン、カシオの三大メーカーが思い浮かぶ。G-SHOCKを使っているし、カシオの世界観にも共感している。だから最初はオシアナスに注目した。
オシアナスはG-SHOCKと違い、薄型でコンパクトなモデルもあり、スーツと合わせる人もいるようだ。しかし、クラシックスタイルとの相性で考えると、どうしてもカジュアル寄りの印象が否めなかった。文字盤の美しさに惹かれたが、今回は見送ることにした。
セイコーは、好きな方には申し訳ないが、どうにも私の嗜好とは合わなかった。いくつか目に留まるモデルもあったが、予算を超えていたため見送った。
残ったのはシチズンである。電波時計にもクラシックな意匠のものがあり、ローマ数字のインデックスを用いたモデルもいくつか見つかった。そこに絞り、買うかどうか真剣に迷うところまで来た。
だが結局、これも見送った。
選んだモデルはチタンバンドだったのだが、クラシックスタイルにチタンという近代的な素材を合わせるのは、どうにも違和感があった。そもそも、クラシックスタイルに合うのは革バンドである。しかし、私は汗による匂いを嫌って、革バンドは除外していた。
ただ、改めて考えてみると、クラシック腕時計を着けるのは夜──ディナーやバーに出かけるときが主だ。その程度の着用頻度であれば、汗汚れを過剰に気にする必要はない。それならば、クラシックスタイルに最も調和する革バンドを選ぶのが自然ではないか。
そう思い直し、方針を変えた。革バンドにするのなら、とことんクラシックに寄せた方がいい。そして、夜だけ着けるのであれば、機械式でも不便ではない。出かける前に巻けば済む話だ。
ここまで避けてきた機械式だったが、ちゃぶ台はひっくり返り、機械式もアリということになった。
思い出したのは、機械式しかないという理由で候補から外していたKUOE(クオ)というブランドだった。2020年に京都で創業し、自社工房でクラシックスタイルの時計を製造している。設立からの年月は浅いが、クラシックへのこだわりは徹底している。
あらためてクオの腕時計を見てみると、相性が良いというレベルではない。もはや「これしかない」と思うほど、私のクラシックスタイルにぴたりと合っている。コンセプトそのものがそうなのだから、当然といえば当然だ。
しかも、よく見るとクオにはクォーツ式モデルもあるではないか。機械式しかないと思い込んでいた私は、これまでの苦労を思い出して目眩を覚えた。だが、これが決定打となり、クオの腕時計を買うことにした。
こうして、クラシック腕時計探しの長い旅はひとまず終わった。だが、旅の終わりは、次の旅の始まりでもある。
一度「機械式もアリ」と判断した以上、次は機械式に手を伸ばしてみようか──。


