前回、一人旅を楽しむには「意味や役立ちから離れよう」と書いた。
一人旅の何が楽しいのか――意味や役立ちから離れて
意味や役立ちを手放し、自分だけの楽しみを見つける――非効率と無駄の豊かさに宿る、一人旅の楽しさ。
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しかし、一人旅を楽しめるかどうかは、気質や素質にも左右されると私は思う。ここでは、私の独断で「楽しめる人の特徴」を書き出してみる。
風景に心を惹かれる人
ふとした日常の風景に心が動かない人にとっては、観光地化された場所以外は「何もない、つまらない」と感じてしまうかもしれない。
風景に無関心な人は、風景を写真に収めることがほとんどないはずだ。私は逆に意味もなく撮り過ぎる方だ。ついにはスマホでは満足できず、一眼カメラを買ってしまった。
高い金を払い、荷物を増やしてまで風景を撮りたいと思う人には、一人旅の素質がある。
街の観察を楽しめる人
一人旅は、いわばフィールドワークに近い。観光地化されていない街並みでも、歩いて観察していると、住んでいる街や他に訪れた街との違いが見えてくる。
その違いは大抵些細なもので、他人に話しても、「ふーん」と、たいして関心のない反応をされることばかりだ。実際、何の役にも立たない情報なのだから当然だろう。
しかし、他人に軽く流されても、些細なことに好奇心を持ち続けられる人は、一人旅の素質がある。
食を通して土地を味わえる人
食べ歩きが趣味の人は多いだろう。しかし保存や流通が発達した今、都心にいれば何でも食べられる。では、地方や田舎へ遠出してまで食べる意味はあるのか。
旅をしていると、案外「現地でしか食べられないもの」が少なくないと気づく。知名度が低く鮮度落ちの早い魚などは、その土地でなければ口にできない。
信州そばも長野に行けば店の数が圧倒的に多く、しかもスタイルは店ごとに違う。多様性を体感できるのは現地ならではだ。
取り寄せ可能な名物料理もあるが、食文化が根付いた土地の空気とともに味わうことには、一層の深みがある。
食事とともに現地の空気を味わえる人には、一人旅の素質がある。

一期一会の会話を楽しめる人
都心には数多くのバーがあり、常連になる人も多い。しかし一見の店は緊張する。まして、住んでいる街から離れた旅先ではなおさらだろう。
私自身は旅先でほぼ必ずバーに立ち寄る。すでに慣れているので、一見の店でもマスターと話し込むことが多い。カウンター席のあるバーで、一見客を冷たくあしらう店は実際には少ない。カウンターは世間話する場でもある。
そうしてマスターと気心が知れ、常連になる人もいる。だが私はむしろ同じ店に続けて行くことは避け、間を開けて訪れるようにしている。
人と話すことは好きだが、毎回違う人と話したい。その方が新鮮で、新しい話を聞けるからだ。だからバー巡りは旅の楽しみの一つになっている。
見知らぬ人との一期一会を楽しめる人には、一人旅の素質がある。
歩くことを厭わない人
ここまで挙げてきたことに共通するのは、歩くことだ。街をゆっくり観察するにも、食べ歩きやバー巡りをするにも、徒歩が最も適している。
歩くこと自体が好きであること。これは一人旅を楽しめる最も基礎的な素質だと言える。
これまで書いたことはすべて、効率や意味では測れない楽しみ方だ。一人旅を楽しめる人は、自分なりに人生を味わう豊かさを持っている。
