ネイビーブレザーは、クラシックスタイルの定番だ。しかし、孤独と無所属を愛する私には、ブレザーの持つ制服感がどこか馴染まない気がしていた。とはいえ、カジュアルダウンしたイタリア風ブレザーのようなジャケットなら、ワードローブに加えてもよいかもしれない。

そう思い直し、構想を練り始めた。

イタリア風なのだから、ナチュラルショルダーで、ウェストがラウンドシェイプを描く型紙を選ぼう。ブレザーなら、やはりダブルブレストが良い。ただし、イタリアらしくポケットはパッチポケットにする。

金ボタンは、どうも制服感を強く感じてしまう。しかし、金属以外のボタンにすると、ブレザーらしさが薄れてしまう。ならば銀ボタンだ。それも強く光るものではなく、燻銀のように落ち着いた色味のボタンがいい。

最も難しい要素は、生地の色と質感だった。無地のネイビーは、生地選びを誤ると、制服やビジネススーツのような印象が出てしまいがちだ。完全な無地で、しかもマットな質感のものは避けた方がよさそうだ。

程よい艶があり、近くで見ないと分からないような無地調のシャドーヘリンボーン。これなら良さそうだ。あとはテーラーで実際にバンチブックを見て決めればいい。生地選びが楽しみだった。

そうして構想を練り上げ、その日はすっかりオーダーするつもりでテーラーへ向かった。しかし、結局ブレザーのオーダーは見送ることになった。

理由は、やはり生地だ。いろいろと見ていくうちに、無地・無地調のネイビーで、制服やビジネススーツの印象を避けられる生地を探すのは、想像以上に難しいことが分かった。

「これなら」と思う生地もあったが、それなりの金額になる。出せない額ではない。しかし、日常的に気軽に着ることを前提としていたので、少し釣り合わないようにも感じた。

この金額を出すなら、ブレザーという縛りをなくし、金属ボタンもやめて、定番の水牛ボタンでスーツを仕立てた方がよいのではないか。そう思い始めた時点で、今回のオーダーは見送りだろう。

そもそも、確実に着る頻度が高くなりそうな服は、他にもある。ならば、まずそちらを優先するべきではないか。今回は、コーディネイトのために、以前からもう二本は欲しいと思っていたトラウザーズをオーダーし、テーラーを後にした。

ネイビーのブレザーは、またいつか、本当に欲しいと思った時でいい。ただ、今回の件で改めて思った。私のライフスタイルでは、ネイビーのブレザーは、やはり必要のない服なのかもしれない。