私の場合、一人旅の楽しみの一つは、飲食店の人と話すことだった。こちらから食事や酒の話を振る。そうして現地の話を聞くこともできる。
それはそれで良いのだが、最近は控えるようにした。理由は、酒を飲みながら話すことにある。
酒を飲みながら話すと、ほろ酔いから長話になり、飲み過ぎてしまうことがよくある。二日酔いになると、翌日、出歩くのが億劫になるし、巡る予定だった店も見送ることになりかねない。
酒を飲むのをやめたらどうか。酒なしでも旅は成立するだろうと思われるかもしれない。しかし、それはできない。地産の酒や全国各地のバーテンダーのカクテルを味わうことは、私の旅から外せない要素だからだ。
ただ、旅で大事なのは、現地を味わうということだ。酒は、その対象の一つに過ぎない。酒だけが旅の目的になってしまっては、本末転倒である。
最近は、旅の道中で、思ったことや感じたことをメモするようにもなった。今までは帰宅後に振り返りをまとめていた。しかし、道中に書いた方が、内容の鮮度が高いのは明らかだ。
実際にメモを取ってみると、自分で思っていた以上に、色々なことを観察し、考えていることに気づいた。この蓄積は記事のネタにもなるし、ゆくゆくは本も書けそうだ。そう考えるようになった。
こうして、店でも雰囲気と酒の味に集中するようになった。その方が、メモに書くことは増える。自然と会話の量も減った。
今は、なるべく向こうから話を振られた時だけ話すようにしている。聞きたいことは帰り際に聞く。それなら、長話になって長居することもない。
会話の量は減ったが、メモに残ることは増えた。以前より旅を深く味わえるようになったと思う。

