ハードリカーのストレート飲みは体に悪い。高い度数の酒は、肝臓のみならず、食道や胃にも負担をかける。そのように聞いて以来、私は30度以上の酒をストレートで飲むことを控えていた。
最近、とあるバーでブランデーを勧められた。その際、ハーフショットでの提供だったが、「ストレートで、10分以上時間をかけて、香りを楽しみながら飲んでください」と言われた。
たまにはストレートもいいか、ハーフショットくらいなら、とタイマーを10分にセットして飲み始めた。ブランデーには全く詳しくないが、マスターの言う通り、香りを楽しめる美味しい酒だった。結局、15分ほどかけて飲んだ。
そうして私は気づいたのだ。ストレートでも、このように時間をかけ、合間に水を挟めば、酔いはそれほど回らない。そして、豊かな時間を過ごせる。
もっぱら、ハードリカーはソーダ割で飲むことが基本だった。しかし、こちらの方が短時間で飲んでしまいがちだ。特に店の人と会話をしながらだと、気がつけばグラスが空になっていることも珍しくない。
去年の夏、ソーダ割のジンを勢いよく飲み、すぐに酔いが回ったことがある。そのまま飲み過ぎ、翌日反省した。今年は二の轍を踏むわけにはいかない。
最近は、他の行きつけの店でも、ハードリカーをストレートで飲むようになった。その際、体に悪いからと避けていたが、ゆっくり楽しめば、それほど酔わないという話もしてみた。すると店の人たちは、ほぼ同じことを言った。
「ストレートは体に悪そうだから」と断りながら、ソーダ割でかなりの量を飲む人は多い。むしろソーダ割の方がペースが速くなりがちだ、と。
やはり、と納得した。同時に、もっと早く知りたかったとも思う。ストレートでは飲まない客だと覚えられていたらしい。
そうしてバーでハードリカーのストレート飲みを楽しむようになったが、ソーダ割の時のように会話の合間に無意識に手が伸び、飲み過ぎるということはない。度数が高いゆえに、口に含んだ瞬間に自然とペースが落ちる。そして味への集中力が戻ってくる。
私の場合、酔いが回ると、おしゃべりが過ぎ、長居して翌日二日酔いになり後悔するというパターンが多い。今のところ、ハードリカーのストレートを一杯でも挟むと、そのようなことは起きずに済んでいる。
若い頃、ハードリカーをストレートで飲むこともあった。ただ、その頃は味わうためではなく、酔うために飲んでいたように思う。
しかし、歳を重ね、いろいろな酒を通過し、健康のために薄味の食事を心がけるようになった。そうして、酒もゆっくりと味わいを楽しめるようになった。もう、酔うためだけに酒を飲むことはない。美味しい酒にありつけない環境なら、いっそ飲まないという選択をとるようになっているくらいだ。
とはいえ、頻繁にハードリカーをストレートで飲むのは、やはり体への負担が大きい。だから、この飲み方はバーだけにしておこうと思う。
しかし、長年避けてきた飲み方を試してみたことで、またバーの楽しみが一つ増えてしまった。

